『女神のタクト』 塩田武士 (2011、講談社)
本の帯には、次のように紹介されてる。
・・・どう見てもたよりない指揮者と、あまりに濃いメンバー。偶然、オルケストラ神戸に足を踏み入れた明菜だが、
そこで封印していた「音楽」への思いを呼びさまされ―。笑いがいつしか感動になる、、猪突猛進・情熱物語!・・・
ずいぶんまえになるが、「のだめカンタービレ」というTV番組が人気だった。
原作はコミックだったと思うが、クラシック音楽をテーマにしたコミカルなドラマだ。
この番組以降、ベートーベンの7番やガーシュインのラプソディー・イン・ブルーがクラシックファン以外にも
ずいぶん聴かれるようになったという話を聞いたことがある。
この本の主人公は、30代の独身女性・明菜。
ふとしたことから、存亡の危機にあるオーケストラの運営スタッフとなり、獅子奮迅の活躍をする。
「もしドラ」と違って、理屈抜きに楽しめる。
登場人物は、みんな一癖も二癖もある変人ぞろい。
才能はあるけど、自信を失って指揮台に立つことを拒み続けるマエストロやまとまりのないオーケストラメンバーをまとめながら、演奏会を成功に導くという物語。
会社やビジネスの世界を舞台とした小説やスポーツを扱った小説は多いが、
クラシック音楽を題材として、オーケストラの人間関係や音楽づくりを、扱った小説は少ないような気がする。
この小説でメインに扱われる曲は、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲3番」とエルガーの「ニムロッド」。
夜は、寒い無線室で聞こえてこない弱い信号に耳を傾けるのもいいけど、こたつに入って本を読んだり音楽を聴いたりするのも楽しいものだ。